古いヤク骨のスペシャルマーラー。
ヤクのマーラーに彫りが存在するものは、新しいツーリスト物以外でほとんど見る事はありません。しかし極まれに本当に古いものが存在します。
この彫りは、デコレーション目的ではなく、東チベットやチベット本土で見られるチベット仏教の信仰の習慣を示します。
ひとつの紋様は、100万回のマントラ(真言)を唱え終えた暁に、ひとつ刻み、いっぱいになるまで繰り返されます。つまり元々は何もないプレーンなものであったという事で、この状態に至るまで、とんでもなく長い祈りの時間が込められてきたという事を意味します。
彫りが存在しない15個以外は、ほぼすべてに4か所彫りがあり(例外として、ひとつ5か所もあります)、どれもがお手製でワイルドに刻まれております。又、彫りの間には、積年の汚れが詰まっています。
何故4か所なのか。一般的にチベット人は数字とチベット仏教を関連し、意味づけする事が好きです。例えば4つ眼があるdZiの場合、四聖諦を象徴するものとして、ありがたがられます。このマーラーも4に強いこだわりが見られる為、何かしらの意味合いを持たせていたと考えられます。
三か所組まれた、オールドアイボリー製のミンゴォ(髑髏)は、非常に貴重なもので100年を越えるものです。ニンマやカギュなど密教色がとりわけ強いチベット仏教の行者が使うもので、象牙でここまで細部にわたる細かい彫りが施されたものは、高僧用や特別な行事用の特注品であったと推測されます。この3つにの背面には卍が刻まれています。
グル玉は同じく古いヤク骨製で、3と1と3で紋様が刻まれています。
トップのストゥーパは折れたオリジナルのdZiが使われている、スペシャルなもので、油がたくさん染みた、風化紋が無数にある美しい珠です。
18~19世紀 東チベットより。
Size 約7.5×6mm 108粒 全長約68cm